トウキョウダルマガエル:東京の里山と共に生きる

都会に残された貴重な里山の風景、谷保。NPO法人くにたち農園の会は、この谷保で、自然と触れ合い、農業体験を通して環境教育を推進しています。
今回は、谷保の水田に生息するトウキョウダルマガエルに焦点を当て、その生態と、私たちがどのように彼らと共存していくべきかを考えていきましょう。
トウキョウダルマガエルってどんなカエル?
**トウキョウダルマガエル(Pelophylax porosus porosus)**は、関東平野から仙台平野にかけての水田地帯に生息する中型のカエルです。 体長はオスが41~73mm、メスが53~82mmほど。 背面は緑色や褐色で、黒い斑紋がある個体もいます。 その名の通り、ずんぐりとしたダルマのような体型が特徴です。
トウキョウダルマガエルは、その名の通り、東京の里山環境に特化して長年生息してきたカエルです。 かつては水田の周辺で普通に見られたトウキョウダルマガエルですが、近年、その数は減少傾向にあります。 環境省のレッドリストでは、準絶滅危惧に指定されています。

東京における里山環境の消滅危機とトウキョウダルマガエル
谷保地域でも、トウキョウダルマガエルは減少しています。 その原因として、レポートでは以下のような点が挙げられています。
- 田んぼの減少と環境の変化:都市化による田んぼの宅地化や、圃場整備による水路のコンクリート化は、カエルの生息地を奪っています。 コンクリート製の垂直な壁は、カエルが水路から這い上がることが難しく、水路に落ちてしまったカエルは溺死してしまうこともあります。 また、あぜ道の減少や防草シートの利用も、カエルの冬眠場所を奪い、生存を脅かしています。
- 水温上昇と水不足:地球温暖化の影響で、田んぼの水温が上昇し、オタマジャクシが死んでしまうことがあります。 また、水不足も深刻です。 中干しや干ばつによって田んぼの水がなくなると、カエルは干からびてしまいます。
これらの原因は、水田をはじめとする東京の里山環境自体が消滅の危機に瀕していることを示しています。 トウキョウダルマガエルの減少は、まさに東京の里山環境の危機を象徴していると言えるでしょう。
トウキョウダルマガエルを守るために
トウキョウダルマガエルは、田んぼの生態系において重要な役割を担っています。 彼らは害虫を捕食することで、稲の生育を助けています。 また、鳥やヘビなどの上位捕食者の餌となり、食物連鎖を支えています。 トウキョウダルマガエルがいなくなると、生態系のバランスが崩れ、私たちの生活にも影響が出る可能性があります。
くにたち農園の会では、谷保の自然環境を守るため、用水路はじめ田畑の管理を手作業で行いカエルが生息しやすい環境づくりにも取り組んでいます。
これらの活動を通して、都市における生物多様性の重要性を広く知ってもらい、次世代へ豊かな自然を引き継いでいきたいと考えています。

参考文献
日本爬虫両棲類学会. (2023). トウキョウダルマガエル. In: 日本爬虫両棲類学会(編), 日本産爬虫両棲類標準和名リスト(2023年6月17日版). https://herpetology.jp/wamei/ (参照日:2025年2月27日) 環境省. (2020). 環境省レッドリスト2020. https://www.env.go.jp/press/files/jp/113017.pdf (参照日:2025年2月27日)